数日後、和泉証券投資情報部長の石川敏夫から電話がかかってきた。
「中井戸くん、佐藤崇が『一声の会』というのを作ったの知っているか」
「佐藤って、あの佐藤ですか。『いっせいのかい』とはどういう字を書いて、何をする会なのでしょう」
「一声は漢字の一に声、会合の会だ。何をするつもりか知らないが、入会金はいらないそうだ。知らないんだったら、入会勧誘書が手に入ったので、今からファックスするよ。とりあえず、それをみて、何か新しいことがわかったら、連絡をくれ。じゃあ――」といって電話が切れた。
程なくしてファックスの機械が「ジ、ジー」と音を立て始め、数枚の紙が吐き出されてきた。すべての受信が終わるのももどかしく、中井戸は受信されたものから順次読み始めた。
「――経済混乱が日増しに進んでいます。日本のGDP(国内総生産)成長率はバブル崩壊後大きく落ち込み、このままではマイナスになる可能性もあります。失業者は二百万人に接近し、今後もさらに増える見通しです。その影響をもろに受けているのがサラリーマンで、当然とはいえベースアップはありませんし、働けるだけでも幸せというのが現状です。これに呼応するように個人の貯蓄額は一九六三年以来初めてマイナスとなりました。しかも高齢化は年々進み、このままでは頼みの年金も当てにはできません――」
「別に、どうということはないな」とつぶやきながら、途中を読み飛ばし、最後の1枚を手に取った。
「――このほど私は『一声の会』という株式を一緒に勉強するための同好会を作りました。私の人生経験からいくばくかでも、皆様方のお役にたてるのではないかと思ったのです。不遜ないい方だと思われた方は、どうぞお気を悪くしないでください。少しでもこの会に参加される方々のお役にたちたいと、心から願っております。 何年後か、何十年後かに『一声の会』に入っていて良かったと思って頂けるように頑張りたいと思います。一緒に勉強していきましょう。きっといずれ、あなたの心になにかが響くに違いありません。お待ち申し上げております。
追伸
『一声の会』ではあなたのお金を預かることは致しません。あくまでも勉強のためのサークルです。入会金、会費なども頂きません。お気軽に、またご自由にご参加ください。
連絡先 03(5×××)××××
『一声の会』 代表 佐藤崇 」
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