サウジV.S.米シェールオイルの消耗戦 [投資α情報(大橋ひろこ)]
2015/05/22(金) 23:35 大橋ひろこ

原油市場に底入れ感が出てきています。WTI原油は、5月に入り1バレル=60ドル台にまで回復、年初来の高値圏で推移しています。

皆さんご機嫌いかがでしょうか、大橋ひろこです。
資源・食糧問題研究所の柴田明夫さんに伺いました。

原油市場に底入れ感が出てきています。WTI原油は、5月に入り1バレル=60ドル台にまで回復、年初来の高値圏で推移しています。これをどう見るか。

原油価格は大きな下落相場を演じた後、半値ほど戻してきました。
しかし世界の原油供給は変わらず潤沢であり、
米国の原油在庫も過去最高水準にあるなど、
供給過剰が解消されたわけではありません。


IEAによると、OPECの4月の産油量は日量3,121万バレルで
年初から同140万バレル以上増加し2012年9月以来最も高い水準です。
特にイラン、イラク、サウジアラビアの増産が顕著で
イラン(3月の277万b/ d→4月282万b/d)、
イラク(同339万b/d→367万b/d)が増産し、
サウジは3月以降同1,000万バレルを超え過去最高水準。


5月6日に発表された米原油在庫は4カ月ぶりに減少したものの
その水準は4億9,000万バレル弱で、過去最高レベル。


原油が高騰した2008年ごろに米国で心理的に安心できる
原油在庫レベルは3億バレルとされていたことを思うと
隔世の感がすると柴田さん。


では何故潤沢な供給にもかかわらず
原油価格が回復してきたのでしょう。

① 昨年来の原油安によりアジアでの需要が増加。
IEAは5月のレポートで、2015年の世界石油需要を
日量9,360万バレルと予想、昨年から7万バレル引き上げた。


②5月1日時点の米国のシェールオイル開発を目的とした
リグ(掘削装置)稼働数は679基と、昨年末から60%減少。
市場では、米原油生産量が近く減少に転じるとの見方が
出てきました。EIA(米エネルギー情報省)も
5月以降には減少に向かう可能性が強いとしています。


こうした背景から投機筋が需給改善を見込んで
買いを入れていることが原油反騰に繋がっているようです。

とはいえ、
直ちに米シェールオイルの生産が急減するともいえない、
と柴田さん。

水平掘削(Horizontal Well)の延伸距離の拡張や
水圧破砕(Fracturing)技術の進歩、
注入する界面活性剤などの化学物質の技術革新が目覚ましく、
生産性向上によりシェールオイルの生産コストも
急速に低下しているのだそうです。


今後の注目は6月5日にウィーンで開催されるOPEC総会。
前回(昨年11月27日)は、原油価格が6月の100ドル台から
80ドル前後まで下落していたにもかかわらず、
スウィングデューサー(需給調整)の役を放棄したOPEC。
その理由は増産するシェールオイルに対して、
市場シェアを奪回する狙いとされています。

今回も減産は見送られるでしょうか。

油価急落にもかかわらず米シェールオイルの増産が
止まないことに対して、サウジのヌアイミ石油鉱物資源相は
以前より「たとえ原油価格が20ドルになっても減産しない」
と発言しています。サウジは徹底抗戦の構えであり、
その象徴が日量1,000万バレルを超える生産だとみられます。


ただ、イラン、イラク、ベネズエラなど、
歳入の大半を石油に依存する(ハイアブソーバー)国の
不満は大きく、OPEC内の軋轢は拡大しているようです。


これまでは、原油価格の下落のスピードが、
シェールオイルの生産性向上のスピードを上回っていたことから
リグの急減につながってきたのですが、
今後、原油価格が60ドル台を回復すれば、
米シェールオイルの採算も改善し、再び米国の
石油生産が増勢に向かうとみられます。
(ただ、長期的には開発のための新規投資が
控えられていることからシェールオイルの減産は必至)。


その場合、原油価格は改めて売られる公算が大きく、
両者のチキンゲーム(消耗戦)はいよいよ正念場を迎えたようだ、と
柴田さんは解説くださいました。
詳しくはオンデマンド放送で柴田さんの解説をお聞きくださいね。

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