産油国の国家財政を均衡させる原油価格とは [投資α情報(大橋ひろこ)]
2014/10/17(金) 23:29 大橋ひろこ
10月に入ってマーケットが神経質な値動きとなっています。過去最高値を更新し続けてきた米株の調整、債券市場に資金が流入、先進国金利が急低下となりドル円市場でも急激なドル高の修正が入っています。

皆さんご機嫌いがでしょうか、大橋ひろこです。
今回は三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田至知さんに下落が続く原油市場についてお話を伺いました。

2014年夏場までは欧州を中心に景気減速懸念が生じていたものの、米国経済が堅調であったために世界経済全体は緩やかな回復基調という見方が主流でした。しかし、ここにきて、欧州を中心とした
景気の下振れが明らかになる中で、欧州や中国の景気が減速すれば、これまで堅調であった米国経済にもマイナスの影響が大きいという懸念が強まってきているようです。

欧州景気の減速の背景には、ウクライナ情勢が緊迫化し、
ロシアやウクライナを取引相手とする欧州企業の心理を
冷え込ませていったといった要因も影響しているようですが、
この問題が長期化する様相を呈しており、
ユーロ圏では、4~6月期のGDPがマイナスになった後も、
7~9月期の経済指標も総じてさえない状況にあります。
特に8月のドイツの鉱工業生産は前月比4.0%の減少は
ショッキングな落ち込みでした。これがきっかけでリスク回避が
巻き起こったとみる向きもあります。

また、中国の8月の鉱工業生産も前年比+6.9%と2008年12月以来の
低い伸びにとどまっており、10月21日に発表される9月分は、
7%台半ばにやや持ち直したとの見方が多いようです。

こうした中、原油価格が下げ止まりません。
国際指標とされる北海ブレント原油は、4年ぶり安値となる
82ドル台に下落している。
6月19日に付けた高値115.71ドルに比べると、
3割近い下落になっています。
WTI原油価格も一時80ドルの大台を割り込みました。

背景には原油需給の緩和があると芥田さん。
需要面では、自動車の燃費向上など省エネルギーの効果から、
石油需要が抑制されるようになっている中で、
世界景気の減速が加わって原油需要の下振れ懸念が強まっています。

供給面では、シェールオイルの増産傾向が続いている中で、
武装勢力と政府の紛争の影響などから低迷していた
リビアの油田からの原油生産が回復してきているほか、
スラム国との戦闘が続くイラクからの原油輸出も順調です。

このような状況の中、産油国は価格支援に動かないのでしょうか。
石油輸出国で構成されるOPECの動向に注目が集まっています。
次回OPECは、11月27日に定例総会を開催する予定です。

従来、OPECの盟主とされるサウジアラビなどを中心に、
ブレント原油で100ドルが適正な原油価格の水準という見方を
示してきていましたが、その水準をかなり下回ってきたため、
原油生産量を削減して、原油価格の下支えを狙う動きが
みられる可能性が指摘されてきました。

10日に、ヴェネズエラが原油価格の下落を阻止するために、
11月の総会を前に、緊急総会の開催を求める発言を行ったものの、
サウジアラビア、クウェート、アラブ首長国、カタールといった
湾岸諸国は、原油価格下落への対応を急いでいない様子だと芥田さん。

12日に、クウェートの石油相は、
「原油市場が供給過剰に陥っている原因は、ロシアと米国の増産にある」
「原油価格の安定のためにOPECがなすべきことがあれば、
行動することはいとわないが、現在は、OPECの決定によって、
原油価格が下落している訳ではない」とし、
「減産によって価格を押し上げようとする試みは、あまり有効ではない」
と、減産には積極的でない姿勢を見せています。
加えて「米国やロシアの生産コストである76~77ドルあたりで
原油価格は下げ止まるだろう」と述べています。

サウジアラビアも100ドルが適正な価格とする立場から離れて、
それよりも低い原油価格を受け入れる立場へとシフトしつつあるようです。
サウジアラビアからの公式な発言はないのですが、
一部報道によると、サウジアラビアは現時点で減産には
消極的な様子が伝わっているようです。

何故これほど原油価格が下落を続けているのに産油国は
協調減産に踏み切らないのか?!

実はサウジアラビアには、1980年代半ばの逆オイルショックと
呼ばれた価格低迷期に減産を行っても、原油価格下落に
歯止めをかけられなかった苦い経験があります。
当時は、OPECが減産しても、ソ連や北海油田の増産の勢いが勝り、
サウジアラビアの大幅減産は、同国のシェアの低下につながるだけ
といった状況になりました。

今回も、米国のシェールオイルの増産は、
OPECの減産とは無関係に進みそうであり、
無理な減産を行ってシェアの低下と価格下落という
二重苦に陥るよりは、ある程度、市場原理に従った価格下落を
許容して、シェールオイルなど高コストな原油の生産が
自然に減退するのを待った方が利口だという考えが
背後にあるのかもしれないと芥田さんは解説くださいました。

一方、従来、原油価格の下落局面では、真っ先に減産を求める発言を
行ってきたイランが今回は、「原油価格の下落に耐えられる」と、
従来からの姿勢を変更する発言を行っています。
ただし、IMFの試算では、イランの財政収支を均衡させる
原油価格は130.5ドルだとされ、国家財政の面からは、
さらなる原油価格の下落は避けたいところだと思われます。

国家財政を均衡させる原油価格(IMF試算)は、
リビア184.2ドル、
アルジェリア、112.8ドル、
イラク109.4ドル、
サウジアラビア86.1ドル、
アラブ首長国74.3ドル、
カタール71.1ドル、
クウェート52.3ドル。

生産国によってその水準はバラバラですが、
リビアやアルジェリアなどは現在の価格水準だと
かなり厳しいのではないでしょうか。

今後はどうなる?
詳しくはオンデマンド放送で芥田さんの解説をお聞きくださいね。

コメント