日本の石油精製業、存続の危機に?! [大橋ひろこコラム]
2014/05/30(金) 23:24 大橋ひろこ
ガソリン価格が高騰しています。

ガソリン小売価格は1ℓ165.8円とリーマンショックの頃の価格に迫ってきました。リーマンショック直前の8月では185円前後まで高値がありましたが、この頃のドル円レートは110円前後。現在のドル円レートが101円近辺にまで接近しており、昨今の市場の変化としての円安もガソリン価格高騰の大きな要因となっています。

また、消費税増税も一因です。3月末は159円程度だったものが4月に切り替わって164円へと一気に、5円もの上昇。159円の3%が4.8円ですから、ほぼ消費税の増税分がそのまま上昇したことになります。


→何故高い?高騰するガソリン価格(2014.5.21放送)
http://blog.radionikkei.jp/trend/post_208.html

こうした市場環境の変化もガソリン価格高騰の要因ではありますが、
市場構造の大きな変化もまた、価格高騰を招いてしまっています。

皆さんは「エネルギー供給構造高度化法」という法律をご存知でしょうか。

皆さんご機嫌いかがでしょうか、大橋ひろこです。
今回は株式会社セキツウ常務取締役の山内弘史さんに
「日本の石油精製業、存続の危機に」というテーマでお話を伺いました。

前回山内さんにご出演いただいた際は、欧州の石化、石油精製業が
存続の危機にある、というお話をいただいていましたが、日本も...?!

→欧州の石油化学・精製業界の衰退の背景(2014.3.28放送)
http://blog.radionikkei.jp/trend/post_181.html

原油価格は軽質原油ほど高価です。
北海ブレントやアルジェリア、ナイジェリア、中東のアラビアンライトなど
「ライト」と名前がつくものが、形質原油。
軽い原油はガソリン・ディーゼルなどが、多く採れます。

重質原油はベネズエラのオリノコタール、カナダのオイルサンドなどが代表的です。
重い原油は残渣油(重油・アスファルトなど)が多く採れるのですが、
軽質石油製品であるガソリンや軽油にするためには再処理しなくてはなりません。
重質原油は軽質原油より安価ですが、ガソリンなどに再処理するコストがかさみます。

精製業者は 高価でも軽質原油を精製して軽質石油製品を生産するか、
安い重質原油を処理して,さらにそこからとれる重油などの残渣油を再処理して
軽質石油製品を生産するかの選択をしているわけですが、
昨今、世界の石油製品需要は軽質化してきているため、高価でも処理が簡単な軽質原油は
どんどん少なくなってきており、将来的には重い原油あるいは超重質原油しか
なくなっていくだろうと試算されているのです。

そこで、日本もこうした流れに対応していこうと、2010年、
「エネルギー供給構造高度化法」が施行されました。
これは常圧蒸留装置(トッパー)に対して
重質油分解装置比率を13%以上にすることを定めたもの。

日本はの製油所は、軽質原油を処理しているところがほとんどです。
重質油分解能力は2010年4月時点で517千b/d、
当時の日本の精製能力は4,873千b/d
ですから、全体の10.6%程度でした。

これを、2014年4月までに13%に引き上げよ、という法律です。
これで、日本も重質原油処理の能力が高まり、時代の流れに対応できるかと思われますが、
現実は違いました。

実際に製油所は法遵守し13%への引き上げを達成しましたが、、、。
2014年4月
全体の精製能力 3,947千b/d
重質油分解能力 532千b/d
→ 重質油分解装置比率 13.5%

全体の精製能力を見てください。
2010年時点の4,873千b/dから2014年は3,947千b/dに大きく減少しています。

製油所は13%を達成するために、重油分解能力を強化する設備投資を行うのではなく、
全体の精油量を引き下げることで比率を上げるという対応をしたのです。


これは、ガソリンの日本国内の需要が減少していく中で、新たな設備投資のニーズがない
ということも大きな背景だったかと思われますが、13%の比率を達成しても、
全体のガソリン精製、供給も落ちてしまうことになるのですから本末転倒、
ガソリン価格は需給がタイトになってしまったことで、
更に高くなってしまったともいえるのです。

行楽シーズンに入る日本の5~6月の石油製品需給はタイト化します。
この時期は製油所の定期修理も行われること、さらに今回は4月からの消費増税が
重なってガソリン小売価格は165.8円/ℓに高騰してしまいました。

山内さんは、こうしたガソリン価格高騰がますますガソリン離れを加速させるのではないか。
と懸念されています。ガソリンが売れないためSSは「安売り競争」に走り、
収益が得られず倒産する流れにあります。
SSは1996年には61,000店ほどあったのですが、今や35,000店にまで減少しています。
300km走らないとSSがないというエリアも出てきました。

ガソリン価格高騰でドライバーは低燃費車・軽自動車・ハイブリッド車に乗り換える時代。
これがさらにガソリン需要が落ち込む要因となっています。

米国はメキシコ・ベネズエラ・カナダの重質原油を処理する体制をすでにとっており
まったく先行きの懸念はありません。

アジア諸国・産油諸国もすでに割安な重質原油を処理し分解設備で軽質化に対応しており、
中国・台湾・韓国・インド・中東諸国では、「残渣油を一切出さない精製設備」が増加、
時代に合わせた設備が整っているのだそうです。

重質油分解装置の対常圧蒸留装置比率が20~30%以上にもなるという
精製設備の近代化に成功しているのは、後発国であるため、
時代に合わせた設備投資が可能だったということもあるのでしょう。

日本では1975年に作られた出光の製油所が最も新しいのだそうです。
40年近く、新しい製油所ができていないのです。
ガソリン需要が減退するなかで、新たな設備投資にはなかなか踏み切れないのが実情。

これまでは高価でも軽質原油を買ってくれば何とかなってきたのですが、
軽質原油が手に入らなくなったら、、、
形骸化してしまった「エネルギー供給構造高度化法」
日本は今後、どのように対処していけばいいのでしょうか。

詳しくはオンデマンド放送で山内さんの解説をお聞きくださいね。

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