景気減速で浮き彫りになる中国の理財商品問題とコモディティ [大橋ひろこコラム]
2014/05/02(金) 13:43 大橋ひろこ

 3月の全国人民代表会議(全人代)の政府活動報告で、2013年の中国の国内総生産(GDP)は56.9兆元、前年度比7.7%増と発表されました。2014年度の成長目標を7.5%前後としていますが、この「前後」という表現は、「必要性と可能性」をともに考慮してのことであり、もはや7%の成長すら覚束なくなっている現れであるとの見方が広がっています。

 

 中国の減速がマーケットにもたらす影響、コモディティ市場にはどのような懸念があるのでしょう。現実に2014年1-3月期の実質GDP成長率は、前年同期比7.4%増に減速していたことも明らかとなりました。

 

コモディティ市場では、昨年来、中国で銅地金、鉄鉱石、天然ゴム、大豆などが投機取引に利用されているのではとの懸念が燻っています。こうしたコモディティを輸入し、それを担保に資金調達をし、高利回りの理財商品に投資しているというものです。いずれも、工業化を背景に中国の輸入が急拡大してきたコモディティですが、この影響で今年2月に銅の価格が急落したとも言われています。

 

皆さん御機嫌如何でしょうか、大橋ひろこです。
今日は資源・食糧問題研究所 の柴田明夫さんにお話を伺いました。

 

 

これまでは、GDPの4割以上を占める固定資産投資を増やすことで景気減速を食い止めてきた中国ですが、これを資金面で支えているとして懸念されているのが、正規の金融機関を介さないシャドウバンキング(影の銀行)の存在があります。その資金調達手段となっているのが高利回りを謳った理財商品や信託商品で、調達された資金は、地方政府のインフラ整備や不動産、鉄鋼、石炭、セメント企業などへ投資されています。

 

資金の貸し手は、個人の投資家や企業・銀行などで、高利回りを期待して、理財商品を購入しています。この資金の流れが順調に回っている間は全く問題ないのですが・・・。 

 

シャドウバンキングが拡大すればするほど、不動産バブルや企業の過剰投資問題が深刻化してきました。投資先の企業の経営が破たんすれば、理財商品の価値は紙くず同様となってしまいます。

 

今年1月、山西省の石炭開発会社に投資していた信託商品が利払い不能に、また、3月には、太陽光関連メーカー(上海超日太陽能科技)がデフォルトに陥り、市場を混乱させました。

 

これを契機に中国で金融引き締めが強化されると、新たな問題が浮上しました。3月に入ってLME銅地金の価格が急落したのです。背景に、銅キャリー・トレードの存在が指摘されています。

 

①   中国の銅輸入業者が、中国の銀行に地金輸入のためドル建てのLC(信用状)を発行してもらい、調達した銅を売却して理財商品を購入し運用。

 
② LCの支払期限がくる直前に運用を解約し、金利の安いドルと高金利の人民元の金利差を稼ぐ。


③結果、中国に銅の在庫が積み上がる。当局の信用引き締めにより金融不安が高まれば、シャドウバンキングそのものが成り立たなくなるとともに、在庫の換金売りにもつながる可能性が。

 

こうした投機的な取引は銅だけではないといいます。

鉄鉱石、ゴム、大豆、金でも同様の取引が行われている都市的されています。

 

中国の鉄鉱石の港湾在庫は4月中旬現在、過去最高に近い1億800万トン強あります。このうち、資金調達の裏付けとして利用されている量は、推計3000万トン(約35億ドル)とされており、これらは常に換金売りのリスクに迫られているとも考えられます。

 

こうした中、中国当局はこのほど、商船三井の鉄鉱石輸送船を差し押さえたことがニュースとなりました。寝耳に水の事態ですが何故このタイミングなのでしょうか。

 

柴田さんは、中国の鉄鋼産業の高度化戦略と関係がありそうだと指摘。同国の鉄鉱石生産は13億トンを超えているのですが、鉄含有率が25~30%程度と低い貧鉱のため環境問題を深刻化させている。このため、政府は国内鉄鉱企業を2025年までに6~8社(1社当り3000万トン級)に集約し、不足分を輸入するとの計画があるのだそうです。鉄鉱石輸入も現在の7億5,000万トンから9億トンに迫るため、鉄鉱石輸送船が必要なるという事情が関係しているのでは?!

 

大豆も不可解な値動きとなっています。中国の相次ぐ輸入契約のキャンセルが問題となっているのです。

(13年の大豆輸入6344万トンの約1割(650万トン)。

この背景には、大豆カスの供給過剰から搾油工場の稼働率が低下しており、マージン悪化があると思われます。

 しかしながら、シカゴ大豆は在庫ひっ迫懸念、天候相場への期待と思惑などから15ドル台に上昇しています。
こうした不可解な中国の動きが景気となり、急落する可能性もあると柴田さん。

 

中国の過剰投資、それに伴うコモディティを担保にした投機的取引、そして金融引締めと理財商品のデフォルト問題。ここからの商品市場は中国を抜きにしては語れません。詳しくはオンデマンド放送で柴田さんの解説をお聞き下さいね。

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