需給緩和状況の原油のワーストシナリオ [大橋ひろこコラム]
2014/04/25(金) 15:56 大橋ひろこ
昨年8月には112ドルにまで上昇したWTI原油価格。米政府は「アサド政権が化学兵器を使用したことにほぼ疑いの余地はない」との見解を示し、オバマ大統領からの命令があればシリアを攻撃する準備ができているとの報道があった「シリア情勢緊迫化」が2013年の原油相場の高値となりました。

実際には米国による軍事介入が避けられたことから原油価格は下落に転じ、11月に向けては91ドル台にまで下落しました。


そして、2014年、直近の値動き。

3月初旬に向けてはウクライナ問題、米国経済の上向き基調で上昇となりましたが、3月中旬には原油在庫増で低下に転じています。

その後、クッシングでの在庫減で反発し100ドル台を回復。
3月の月間平均は、100・51ドル台で2月より17セント低い水準です。
ブレントも同様の値動きですが、111ドルを超えたのは3月3日のみでした。

そして4月。リビア、ウクライナ問題再燃で4月3日以後は、
100ドルを超える推移となり、21日には今年の最高値104・37ドルまで上昇。
米国では、ここからがガソリン需要増の期待が高まるシーズンです。

米国指標が好調であることや中国経済の動向にも過剰な懸念が払拭され
WTI原油価格を支えたと見られます。

皆さんご機嫌いかがでしょうか、大橋ひろこです。
今日はオイルエコノミスト藤沢治さんにお話しを伺いました。

直近のNYMEXのネットロングは、40万枚近くに増加しており短期筋が
原油を買い越していることから高い水準で推移しています。
藤沢さんの月間平均は予想値で102~103ドル。
前月より約2ドルほど高く推移するだろうとのこと。

地政学要因や金融要因で原油価格は大きく動くとされていますが、
それでもここ数年は85~100ドル台での安定推移。ダイナミックな
動きにはなっていません。足元の価格は100ドル台到達で
レンジ上限近辺ですが、ここからはどのように動くのでしょうか。

まず、変動要因のひとつ、地政学要因。ウクライナ問題については
これ以上のロシアの積極的軍事介入は無いだろうということで
あまり原油市場はリスクとして捉えていないようです。
一方でイランは徐々に原油輸出を増加させており、
これも原油の下落要因です。

しかし、イランの核濃縮疑惑は7月迄は欧米側も合意しないとみられ、
先延ばし。シリア問題は6月の選挙が焦点とのことですが、
アサド政権継続とみられ解決は長引くと思われます。
しかし、現状の原油価格を押し上げるほどの新味はありません。

では需給要因はどうでしょうか。

非OECD諸国の原油生産増から世界需給は緩和傾向。
米国のシェールオイル革命による需給の緩和に加え、
リビアやイラクの生産増もあって、供給懸念はほとんど生じていません。

リビアやイラクの増産となれば、OPEC内での
原油減産の議論が出てくると見られます。減産分を補充してきた
他のOPEC諸国が減産しなければ、供給過多による値崩れが起きてしまいます。

ポイントはサウジアラビアの出方で、サウジが生産量を
900万バレル/日以下に落とせるか?どうか、だと藤沢さん。

経済金融要因からみるとシャドーバンキング問題などが騒がれた
中国は、景気減速も、ハードランディングは避けられるだろうという
見方が広がりつつあるようです。しかし、習政権による引き締め政策で
個人消費の落ち込みが気になるところ。

米国経済は上向き基調で、米株も再度上昇基調に回帰。
景気回復による需要増の思惑はあるものの、
投機資金はコモディティ市場から撤退の方向。
今週は英バークレーズ銀行のコモディティ部門撤退の報道がありましたが、
リーマンショック以前に加熱した原油価格上昇による規制強化が
影響しているとみられます。。。。

IEAの需給予測表からは四半期別には、2Q, 3Q, 4QともOPECが
現在の30mmb/の原油生産と650kb/dのNGL生産を続けてもバランスするの
ですが、1Qでは在庫積み増しが1.1mmb/dあるので、
これが重しとなって価格の上値は限定されると藤沢さん。

2014年年間では、需要増が前年対比1.3mmb/d,
非OPECの生産増が1.5mmb/d(北米だけでも1.3mmb/dの増加)なので、
需給は緩和傾向とのことで、今後の価格は徐々に下降すると
藤沢さんは解説くださいました。

具体的な価格予想はオンデマンド放送で聞いてくださいね。

◆ただし、最悪のシナリオ(Crisis & Worst Scenario)として
ロシアがウクライナ問題で、ウクライナ東部に軍事介入した場合は別。

欧米が反発して、ロシアへの経済制裁として、
ロシアからのガス、原油、石油製品の購入を停止するか、
量的に削減するか津手段を取った場合には、原油、ガス市場で大混乱となるそうです。

ロシアからの石油輸出は、2013年では、
原油 4.3mmb/d (そのうち3.05mmb/dは、OECD欧州へ輸出)
製品 2.8mmb/d (そのうち1.02mmb/dは、OECD欧州へ輸出)
合計で、7.1mmb/dで世界の石油需要の約8%を占めています。

欧州の石油需要の32%は、ロシアからの輸入で賄われていることから、
ガス市場は大混乱に陥ると見られます。
米国は、欧州へガスを供給するとしていますが、まだ先のこと。
実質、欧米、特に欧州にとっては、制裁でロシアからの石油、
ガス輸入を全面禁止はできないと見られます。
ロシアに対する厳しいこのような制裁は、実際には実行不可能ですが、、。

このシナリオの帰結は、誰も予想していないとしながらも、
ロシア、中国、イラン、シリア、イラク、南米諸国のグループと
米国+欧州諸国のグループに分かれて紛争がこじれれば、
不測の事態に陥る可能性があると藤沢さんは解説くださいました。

詳しくはオンデマンド放送で藤沢さんの解説をお聞きくださいね。

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