欧州の石油化学・精製業界の衰退の背景 [大橋ひろこコラム]
2014/03/28(金) 19:13 大橋ひろこ

アメリカのシェール革命が、様々な世界の構造の変化をもたらしています。

2014年3月7日、世界第4位の石油精製・化学会社であるINEOS(イネオス)のジム・ラトクリフ会長がEUの欧州委員会のバローゾ委員長宛てに「このままではヨーロッパの化学産業はその多くが倒産するしかない」とのオープン・レターを送付しました。一体何が起こっているのでしょう?!

 
皆さんご機嫌いかがでしょうか、大橋ひろこです。

今回は株式会社セキツウ常務取締役の山内弘文さんに
世界の石油精製・石化産業の今後について伺いました。

 INEOSとは石油化学,石油精製業を中心に16の事業部門を有し,世界13カ国に跨る生産ネットワークを形成する世界第4位の石油精製・化学会社です。

その大企業の会長がバローゾ委員長に「なんとかしてほしい」と泣きついたのです。「米国のシェールガス革命がすべてを変えてしまった。このままでは欧州の石化も石油産業も消滅してしまう」。

 

その内容を山内さんに伺いました。

 

ヨーロッパの化学産業は100万人を雇用。関連雇用も含めれば500万人。売上高は1兆㌦にも上ります。

ところが、現在、ヨーロッパのガス価格は米国の3倍,電気料金は50%以上割高となっており、シェール革命に湧く米国や産油国である中東の原料価格と比較すると競争力では到底かないません。燃料、原材料高にあえぐヨーロッパの化学企業の多くは10年に以内に閉鎖の事態に直面するというのです。

 

米国では710億㌦を投じた石化プラントの新増設が進んでいるそうです。一方のヨーロッパは閉鎖が相次いでいるのが実情。英国では22が閉鎖され,新設はひとつもありません。

中東でもアブダビ,カタール,サウジアラビアで石化プラントの建設が続き、イランでも新規600万㌧ものエチレンプラントが立ち上がる予定。また、中国でも次々とプラント建設が進んでおり、これまでは世界の余剰な化学製品をすべて受け入れてきたが,これからは自国生産分を消費して,余剰分は輸出するようになっていきます。

 

ところが,ヨーロッパでは環境税導入,原発閉鎖の方向で、シェールガスはありません。輸入化学品が津波のように押し寄せてくるのに,独禁当局は無関心でリストラを邪魔しているというのです。

 

米国とのコスト格差は米国のシェールガス革命が背景。2006年に始まった米国のシェールガス革命で原油価格はWTIが現在100㌦/㌭前後であるのに対して,北海ブレントは108~109㌦である。今はこの格差が縮まっているのですが,20㌦以上の「ブレント高」という局面も珍しくはなくなってきています。

また、米国の天然ガス価格は2013年平均で約4㌦/百万Btuであるのに対して,ヨーロッパのLNGは14~15㌦と3~4倍にも上ります。

この大幅な格差はまず燃料コストの格差となって跳ね返ってきます。これは電気料金の格差にも現れます。そしてもちろん、原料コストが圧倒的に高いということですね。

天然ガス価格はシェールガス大増産によって2~3㌦まで急落しました。付随してエタン価格も70~80㌦/㌧まで急落したことで「死に体」といわれていた米国の石油化学は再生・復活したのです。天然ガスの急落は電気料金の著しい低下をもたらしガス料金も下落。原燃料費が安くなりました。

この結果,何が起こったかというと,製造業が米国回帰を始めたのです。1950年代には米国から消えてしまったといわれた白物家電製造業まで米国に帰って来ているのです。日本の製造業もこれまでの東南アジアシフトから,最近では米国へ移転するという流れに代わってきています。こうした流れが、ヨーロッパでは半減する利益も米国では3倍となるのです。


税制の見直しや政府支援などの対処がなされても、米国との原油価格格差・天然ガス価格格差・原料価格格差が解消されなければ、根本的に欧州の石化・石油精製産業の衰退は避けられないのが実情です。こうした問題は対岸の火事ではありません。日本の精製・石化に明日はあるのでしょうか?!

詳しくはオンデマンド放送で山内さんの解説をお聞きくださいね。

 


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