新型コロナウイルス感染がアジアからヨーロッパへ拡大。投機家一斉にリスク回避に動きWTI原油価格も再び50ドル大台割れとなっています。25日CDC(米国疾病対策センター)「新型コロナウイルスの米国でのまん延に備えるべき」と声明、これが、米国株式市場でもリスク回避を強めました。
皆さんご機嫌いかがでしょうか、大橋ひろこです。
今日はエネルギー情報ネットワーク代表 山内弘史氏にお話しを伺いました。
25日、NYMEX原油先物市場ではWTI原油価格が
前日比1.53㌦下落し、49.90㌦を示現。
2月24日の中国の国営石油会社CNPC(中国石油天然気集団)研究院の発表によると
1~3月中国石油製品の内需は前年同期比35.7%もの減少となることが明らかとなりました。
内訳としては
ガソリン30.6%減,
ディーゼル37.6%減,
ジェット燃料油47.4%減
ちなみに、2019年の中国の石油需要量は日量1,451万㌭でしたが
2019年Q1に限定すると日量1,438万㌭。
この数字を軸に36%減ということになると
中国の1-3月の石油製品需要は日量929万㌭に減少することとなります。
11日、先んじて発表されていたEIAのSTEO予測では
2020年の中国の石油需要は日量1,489万㌭/日、、、、
全く予測ができていませんでした。
そして2019年の中国の原油輸入量は日量1,016万㌭でした。
同じく原油生産量は日量383万㌭。
需要減少見合い分だけ輸入量が減少すると、
2020年原油輸入量は日量650万㌭/となり、
前年比日量366万㌭/減となります。
この衝撃はあまりにも大きい。
新型コロナウイルスによる原油価格下落を受け
OPECプラスが追加減産で打ち出したのは日量60万㌭。
これもロシアが難色を示しており合意できるかどうかわかりません。
昨年12月に決定され、1月からスタートした協調減産は日量170万㌭。
仮に60万㌭の追加減産合意があったとしても
合計で日量230万㌭では中国分の需要減少に全く及ばず、です。
中国で滞っているのは数字上の原油需要だけではありません。
製油所稼働率が低下しているだけでなく石油・原油輸配送が停滞しています。
つまり、陸揚げができずタンクからの払い出しがない状況にあります。
中国沿岸に荷揚を待って滞船しているのです。
23日現在28隻が滞船しているとの情報もあり
単純計算で28隻×200万㌭=5,600万㌭が海上でジャブついています。
同じことがLNGでも起きています。
中国CNOOC(中国海洋石油)がLNG輸入のフォースマジュールを宣言。
シェル、トタールが受け取り拒否を受けたようです。
石油需要同様に、中国ではLNG需要も激減しているため
輸入契約を履行できないと宣言したのです。。
※フォースマジュール=不可抗力宣言
日本でもLNGは余剰となっていますが長期契約玉の引取り義務があるため、
これまでフォースマジュール発動をしたことはありません。
日本の余剰LNGは静岡ガスや西部ガスなどがンテナ船で
再輸出する事業を行っていますが、中国はじめ世界のLNG需要も落ち込んでおり
買ってくれるところがなくなってしまいました。。。
現状のLNGの北東アジアスポット市況、
JKMは2月に入って3㌦/百万Btuを割り込んでしまいました。
JKM=ジャパンコリアマーケット
中国の環境対策でクリーンエネルギーとして一気に膨らんだ世界のLNG生産ですが、
これまでは中国の輸入の急増もあって、JKMは2017~2018年冬季には12㌦ありました。
これが2019~2020年冬季には5㌦まで下落、
足下のJKM価格は3㌦を割り込むほどに。。。
中国・日本の輸入が減少する一方で,生産量は急増を続けた結果ですね。
こうした中、ロシアの天然ガス輸出は
① 「シベリアの力パイプライン」2019年末稼働
LNG換算2,800万㌧が輸出できる状況に。
② ヤマルLNG 液化能力1,650万㌧
~2017年欧州・中国への出荷開始。
③ アークティックⅡLNGが 2023年から
~1,980万㌧/年生産開始予定
④ ノルドストリーム2
ドイツを中心に 2020年上半期完工予定が
米国の経済制裁で遅れている状況
⑤ トルコストリーム
加えて米国ではシェールガス大増産続いている結果
ヘンリーハブ天然ガス市況は1.8~1.9㌦に下落しています。
このほかカタールのノースフィールドのLNGも
現行7,700万㌧から2025年1億2,000万㌧に増強しており
まだまだエネルギー市況全般、需給のゆるみからの下落余地は大きいと山内氏。
詳しくはSpotifyのポッドキャスト配信で山内氏の解説をお聞きくださいね。
https://open.spotify.com/show/230k9NexbGZ5g1h4uBShSk