皆さんご機嫌いかがでしょうか、大橋ひろこです。
今回はオイルエコノミスト藤沢治さんに
原油価格急落の背景についてお話を伺っています。
◇9月―10月の原油価格動向
6月からスタートした原油価格の下落。
9月は、IEA(国際エネルギー機関)や
米国のエネルギー情報局の世界需要予測の下方修正でさらに下落が加速しました。
WTIの月間平均価格は$93.03/バレル、ブレントは$98.57/バレルと
前月より3ドル、4.8ドル下落。
10月、IEAは4ヶ月続けて今年の石油需要を下方修正。
米国内の原油在庫増、シェールオイルの生産増、
リビアの生産回復等で需給緩和となる一方、
IMFは世界の経済成長予測を下方修正。
米国経済は好調の指標が続き、金融緩和策の中止からドル高となっており、
これが原油安を増幅させています。
欧州経済の不振は継続。世界の需要は弱いままです。
イスラム国もイラク南部には侵攻できず、原油生産には影響が無いことなどから
WTIの10月の月間平均は、約$85/バレル、
ブレントの月間平均価格は、約$88/バレル程度と
9月平均よりWTIで$8,ブレントで$10の下落となりました。
因みに、今年のWTIの最高値は、
6月20日の$107.26, ブレントは6月19日の$115.06であったので、
10月29日の価格と比べると、この4ヶ月間に、WTIで
約$22, ブレントで約$29の下落で、それぞれ20%、25%の落ち込みとなっています。
◇OPECの動向
こうした中、産油国があまり大きな声を上げていないのが不思議ですね。
11月27日にOPEC総会が開催される予定で、関係者はOPECが現在の生産枠である
日量3,000万バレルの減産をきめるか否かに注目していますが、
最大の産油量を誇るサウジは$85/バレルでも財政的に問題なしとしていますし、
普段は、減産を主張し値上げを狙うイラン、ベネズエラも今回は、
価格が下がっても問題ないとしているのです。
藤沢さんは、産油国各国が財政的に問題がないという点には懐疑的で、
総会前に各産油国首脳の発言や話し合いがニュースとなるであろうと指摘されます。
しかしながら、生産枠をたとえ下げたとしても、
個別の国々の生産量の割り当ては出来ないので、
恐らく日量3,000万バレルの生産枠は変えないであろう、と予想。
つまり、実質減産とはならないわけで一層の価格下落要因となるやもしれません。
◇需給要因
米国のシェールオイルの増産は、予想以上のレベルで続いています。
OPECが減産できないとなれば、米国が減産に舵を切るということは
ないのでしょうか。そもそも、原油価格が何処までさがれば
生産にブレーキがかかるのか、、、!?
シェール生産コストは各生産地によって異なるとしながら、
藤沢さんはバレル当たり50-60ドルと言われていると
お話くださいました。現在80ドル前後ということで、
まだまだ生産調整を行う必要に迫られるラインからは
余裕があるようです。
需要面ではこれから冬季に向かうので石油需要
(特に暖房油の需要)は上昇するのですが、米国では暖冬予想。
天気予報からは大きな需要が見込めないようですね。
◇地政学的要因
イスラム国の脅威は続くも、米国はイランと和解して
イスラム国掃討作戦に出る可能性もあるのだそうです。
掃討には地上戦が不可欠ですが、しかしながらオバマ政権は
地上戦には躊躇している模様。トルコやサウジなどの
イランを除く中東諸国も消極的です。問題は長期化の様相。
イラン軍が地上戦に動けばイスラム国の掃討には効果がありますが、
イランの制裁は緩和されるのは必至という状況にあります。
◇経済金融要因
米国の量的金融緩和策の中止は、利上げ観測に伴い
ドル高傾向となるため、原油価格押し下げ要因は継続します。
新興国から米国の資金が米国へ回帰すれば、
新興国は不況に陥るであろうということで、商品相場も、や
上値が重い展開が続きそうです。
しかしながら潜在的な金余り現象は続くと思われ、
現在の価格は、売られすぎの感があり、
需給を中心としながらも反発する可能性はあると藤沢さん。
◇2014年第4四半期から来年半ばまでの予想価格
「中東での紛争が激化で産油国に影響を与えることは無い」
ことを前提とした予想を伺いました。
現時点の80ドル、ブレントの85ドルはやや過剰反応気味。
第4四半期は、平均で今よりやや持ち直し、
WTIで$85, ブレントで$90,
2015年の1-3月は、冬場なのでやや持ち直し、
WTIで$90, ブレントで$95程度。
2015年4-6月は、需要の端境期、一転して落ち込み、
WTIで$85, ブレントは$90程度で推移。
詳しくはオンデマンド放送で藤沢さんの解説をお聞きくださいね。