EV車、普及に課題山積~どうなる?!石油需要構造変化 [大橋ひろこコラム]
2017/12/13(水) 23:24 大橋ひろこ

次世代自動車のEVシフトが大きなテーマとなっています。
フランスや英国が「2040年にガソリン・ディーゼル車の販売禁止」を打ち出し、中国やインドもこれに続くとみられていますが、ガソリン・ディーゼル車がEVに置き換わっていく流れの中で、石油など一次エネルギーの供給構造にどのような影響を及ぼしていくのでしょうか。

皆さんご機嫌いかがでしょうか、大橋ひろこです。
今日はエネルギーアナリスト大場紀章氏に自動車EV化の実情と
想定し得るエネルギー需給構造の変化についてお話を伺いました。

そもそも現在の「EV大量普及のシナリオ」は、バッテリーコストの急速な低減が前提で
展開されています。多くのEVで採用されているリチウムイオン電池の1kWh当たりコストは、
この10年間でおおよそ4分の1にまで圧縮され、目覚ましい技術の進歩ではあるものの、
EV需要を見込んで蓄電池に使うリチウムやコバルトといった資源は高騰し始めており、
コスト低減には逆風となっています。EV車普及のスピードが読み切れないことから
大規模設備投資にも慎重にならざるを得ないというのが実情で、素材の高騰は
バッテリーコストの低減の障壁となってきます。

EV自動車の車体コストの半分はバッテリー部分。
利便性を追求するとバッテリーが大型化しコストが上昇します。
小型のバッテリーでは充電回数による劣化が早井という問題が。

また、現行の急速充電器は定格出力で多くが50kWという水準で
満充電に約30分かかり、利便性に劣ります。
出力を上げれば高速化は可能ですが、高出力化を目指せば、
これもまたバッテリー劣化を早めるという結果に。

スマートフォンのバッテリーと同じです。
2~3年も繰り返し充電を繰り返せばバッテリーが劣化しますが
基本はバッテリーの交換はできません。結局買い替えを余儀なくされます。
(技術的にはバッテリー交換が不可能ではありませんが
交換コストも高いため、結局買い替えた方がいいというのが現状)

様々な問題から、EV化が急速に進むとは考えにくいと大場氏は指摘します。

また、EVの競争力の1つが「燃費の安さ」にあります。
一般的なHVが約6円/kmであるのに対し、EVは約3円/kmと安いのですが、
この差は現行のガソリン代を前提にしています。

現在、ガソリン価格の約半分は揮発油税などの税金が占めています。
道路保守などの財源はガソリンへの課税に頼っていますが、EVの普及率が高まれば、
EVの充電などへの課税がテーマとして浮上してくる可能性が。
現状ではEVは"税逃れ商品"。
仮にガソリン並の税が課されれば、EVの燃費上の優位性はなくなってしまいます。
税制次第で競争力は変わるのです。

 

IEA(国際エネルギー機関)が11月に発表した年次報告書
「世界エネルギー展望(World Energy Outlook)」の2017年版は、
2040年に世界のEV保有台数は2億8千万台まで膨らむと予測しています。
現在の世界の自動車保有台数は約13億台。それほどのスピードではありません。

 
IEAはEVの最大普及シナリオとして9億台に達するケースの試算も行ってますが、
その場合でも単純計算で日量800万バレルの石油消費削減であり
現在の石油需要の9%弱に相当する程度です。


現状でも、自動車燃料用の石油消費は全体の35%程度しかありません。
石油消費の多くはプラスチックや薬品などの石油製品や、ボイラー燃料などの産業用途なのです。
その35%も「ガソリン20%+ディーゼル15%」であり、
ガソリン車のほとんどがEVにシフトしたとしても、トラックなどの物流で使われている
ディーゼル車の代替まで実現できなければ、大きく石油消費を減らすことにはなりません。
積載重量が重く、走行距離が長いトラックのEV化は容易でないと指摘されています。

大場氏が次世代自動車の在り方のキーワードとなってくると注目しているのが
「MaaS」Mobility as a Service(サービスとしてのモビリティ)

詳しくはオンデマンド放送で大場さんの解説をお聞きくださいね。

コメント