トランプ政権後のエネルギー情勢と原油価格 [大橋ひろこコラム] [マーケット・トレンド]
2017/02/15(水) 20:12

2017年、WTI原油価格は1バレル=50ドル台前半で強含み推移を続けています。

OPECと非OPECは1月22日、昨年合意した協調減産に対する第1回監視委員会をウィーンで開催し、減産目標である日量180万バレルに対し、同150万バレル(80%)の減産を履行していると発表しましたが、2月13日公表されたOPECオイル・マーケット・レポートでも、1月の生産量は減産目標の9割を達成したことを明らかにしています。
ただしロシアなど非OPECの減産は目標60万バレルの約4割に留まりました。高い減産遵守率が原油価格の高止まりの背景とみられます。

皆さんご機嫌いかがでしょうか、大橋ひろこです。
今回は資源・食糧問題研究所 代表 柴田明夫さんに
トランプ政権後のエネルギー情勢と原油価格をテーマにお話を伺いました。

◆トランプ政権のエネルギー政策

エネルギー産業の強化を図ろうとするトランプ政権の閣僚人事には
石油・天然ガス産業の経営者が多いことが注目されています。

①世界最大の石油企業であるエクソンモービルCEOの
レックス・W・ティラーソンを国務長官(日本の外務大臣に相当)に起用。
石油産業の振興への姿勢を鮮明にしています。

ディラーソン氏はロシアの石油・ガスの探査開発など上流部門での
仕事で功績を挙げ、エクソンモービルのトップに上り詰めた人物です。

ロシア最大の石油企業ロフネフチのセーチン社長やプーチン大統領とも懇意で
あり、北極海やメキシコ湾での石油・ガス開発でロシアとの協力体制が
強まる可能性が高いことが指摘されています。

当然、彼はウクライナ危機に対して現在欧米が行っている
対ロシア経済制裁には反対の立場。


②米国の環境政策を指揮するEPA(環境保護局)長官には、
産油州であるオクラホマ州司法長官のスコット・プルイット氏が就任。
オバマ大統領のシェールオイル開発に関する環境規制に反対の立場を
表明しており、早速規制緩和の動きが。

建設が禁止されてきたカナダからテキサス州に原油を輸送する、
キーストーンXLパイプラインの建設も大統領令に署名がなされました。


③CIA(米国中央情報局)長官に起用された共和党下院議員の
マイク・ポンぺオ氏は、オバマ前政権のイラン核合意に
かねてから反対している人物であり、
新たなイラン制裁の作成に向け動き出しているようです。


④エネルギー長官のリック・ベリー氏は全テキサス州知事。
エネルギー産業を代表する立場にある人物です。


こうした閣僚布陣から打ち出される主要政策は、
①環境規制の緩和でその延長にはパリ協定離脱も視野にある、
②石油・天然ガスの増産と輸出拡大。
シェールオイル、シェールガス、石炭の増産へ。
③資源外交でロシアとの協力。
特に北極海やメキシコ湾での戦略的提携を進める―の3つ。

◆リスクをはらむトランプ政権の中東政策

トランプ政権にとって、国内のシェールオイル開発は
原油価格の押し下げ要因となります。エクソンモービルやシェブロンなどの
エネルギー企業やロシアにとって痛し痒しですね。


実際に足元では原油価格の回復もありリグ稼働数は、
昨年5月の404基を底に増加のトレンドに入っており、
2017年2月時点では728基が稼働しています。
これに伴い、シェールオイルの生産量も2016年12月時点で
日量454万バレルまで回復してきました。


しかし、中東情勢が緊迫化すれば、原油価格の上昇と
国内エネルギー産業の競争力強化の両方を手にすることができます...。
こうした観点から、トランプ政権の中東政策を見ると興味深いと柴田氏。


トランプ大統領は就任早々、イラク、シリア、イラン、スーダン、
リビア、ソマリア、イエメンなど政情不安定なイスラム圏7カ国出身者に
対する一時入国禁止令を発し、世界的な混乱を招いています。
また、中東政策に関して
親イスラエル、反イラン、イスラム国(IS)壊滅という
3つの「アイ(I)」政策を主張しています。


オバマ前政権で悪化したイスラエルとの関係修復を図るため、
駐イスラエル・米大使館をテルアビブからエルサレムに移すと発言。
仮にこれが実行された場合、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教の
信者を巻き込む宗教戦争に発展しかねません。


また、トランプ氏は、前政権下で取り決められたイラン核合意を
「これまで行われた取引で最悪のもの」と酷評、
今後新たな制裁を含めた対イラン措置をとる可能性が高まっています。

これに対し、イランも弾道ミサイル発射実験を行うなど
両国の緊張が高まっていますが、今後、5月に大統領選を控えたイランで、
穏健派の労派に大統領に代わり再び反米強硬派が勝利する恐れが出てきました。


ISに対しては、壊滅に向けロシアとの共闘を模索し、
アサド・シリア大統領については存続を容認する姿勢。
サウジアラビアにとっては、IS壊滅は好ましいものの、
アサド政権の存続はイランの勢力を温存することになり看過できません。


これら中東情勢を巡るリスクが1つでも顕在化すれば、
原油価格上昇のシグナルとなるでしょう。
原油価格の上昇局面におけるシェールオイル生産拡大を図る
トランプ政権にとって願ってもない環境が整うことになるのです...。


OPECの原油減産遵守率は予想を上回ったとはいえ、
需給は決してタイトではありません。

また、投機筋の先物市場での原油ロングポジションは過去最高レベルに
達しています。この裏に、中東情勢の緊迫化が?!
詳しくはオンデマンド放送で柴田さんの解説をお聞きくださいね。

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