2月19日番組から [番組スタッフから]
2010/02/19(金) 11:00 番組営業担当K

今月は「水産資源(=さかな)を考える」をテーマに、関西学院大学経済学部教授の東田啓作さんにお話していただいています。今回はその3回目、「ITQとプール制」についてお話いただきました。

前回は、資源を管理しながら漁業を続けていくための方策として『漁に出ていい日数』『漁にいっていい時間』『漁具や船の制限』といった「インプットコントロール」、そして特定海域の漁獲総量を決める『TAC制度』についてお話いただきました。
今回はさらに別の方策を考察していきます。


●個別漁獲割当
漁協レベルで1日あたり・1年間あたりの総量を設定。その割当を個人(漁船)ごとに割り当てる。
  ↓
個別漁獲割当をさらに進めた制度

●ITQ(individual tansferable quote)=「譲渡可能な漁獲割当」
個別漁獲割当を売り買いできる
cf 二酸化炭素などの温暖化ガス排出権を取引制度

 ITQ制度はTAC(漁獲総量)の設定とセット
   →資源管理の観点から全体でこれくらいまでならとっていいだろうという上限を
    設定し、細かく分けて個々の漁業者に個別割当として配る。

 例
  ・漁師「東田さん」「佐藤さん」・・・同じ海で同じ魚を1トンとる権利
  ・浜値(水揚げ時の値段)・・・1キロ300円
  ・「東田さん」・・・1キロのさかなをとるのにコスト100円
            →1キロ当たり200円の利益
   「佐藤さん」・・・1キロのさかなをとるのにコスト200円
            →1キロ当たり100円の利益

「東田さん」が「佐藤さん」に「1キロあたり150円で漁獲する権利」を販売したら・・・
→「佐藤さん」は「150円で権利を買い」、「100円のコストをかけて」魚をとる
→キロ当たり50円の利益

=「東田さん」は、「漁業をすることなく」150円の利益を得ることができる
  (「漁業をしていた」ら300円-200円=100円の利益しか出ない)
=「佐藤さん」は「自分の漁業」分で200円の利益+「権利を購入した分」で
  50円の利益(50円の利益を上乗せできる)

  ★さらに・・・
   全体の漁獲総量は変わっていないので資源枯渇も防げる
 
  ノルウェー=「個別漁船割当」で、漁船を廃船にした場合に取引ができる
     漁船数 1987年17239隻 → 2005年7727隻
     →生産性の上昇、収入増加、価格の上昇
  ニュージーランド、アイスランドでも導入
     =資源安定・回復、魚の価格の安定につながる

  ・欠点 「権利の価格」が変動→将来の生活が不安定に
      「船が大規模化」→一部漁業者の寡占状態 
       →失業の可能性 などの懸念があるが、
  今の時点では一番効果的な方法ではある。


●プール制=複数の漁業者の間で得られた収入をいったんプールし、

 事前に決めておいたルールに従って収入全体を再配分。
  →がんばってたくさんとった利益を他人に取られてしまう?
   =他人にとられたとしても最終的には一部は自分の利益に。
    「コモンズの悲劇」のメカニズムが働きにくくなる

 資源管理を目的として導入されたものというよりは、狭い海域での漁業者間の
 過当競争、過剰投資・設備を避けるために導入された。=漁獲管理の側面

 ・欠点 自分が頑張った分だけの利益が得られない=労働意欲がそがれる
    高く売れるものをとろうという意欲まで減退→全体の収入自体も下がってしまう


  いくつかの資源管理手段を考察してきたが、一つの手段だけではうまくいかない
  ・多くの漁協・政府レベルでインプットコントロールとアウトプットコントロールが
   平行して実施されている
  ・資源管理と漁獲管理をあわせて実現できる必要がある。「資源管理をすると、
   最終的に自分の利益にもつながる」という意識を持つことが大切


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