『風たちぬ』 ジブリの新たな試み
2013/07/23(火) 00:22 ディレクター

宮崎駿監督の最新作『風たちぬ』が7月20日全国公開された。
「美しい飛行機」に純粋な憧れを持つ青年、二郎の半生を描く。病弱なヒロイン菜穂子との出会いと別れ。人生の師への尊敬と友情。閉塞感が増し、日本が破滅に向かって突き進む大正時代、自分の夢に突き進んだ二郎はやがて後にゼロ戦と呼ばれる戦闘機の開発に携わる。夢を追った二郎に残されたものとは――。

前作『崖の上のポニョ』(興収155億円)は、映画を観た子どもから大人までが「ポニョ、ポニョ」歌った。5年ぶりの新作アニメとなる本作ではファンタジー色を控え、リアリズムへと大きく舵を切った。主題歌は荒井由美(ユーミン)の『ひこうき雲』。

宮崎映画の特徴であった力強く躍動感のある女性主人公から一転、本作では情熱を秘めた青年が主人公というのも新鮮だ。男っぽいけどカタい印象を作品全体に反映している。二郎は実在のゼロ戦設計者堀越二郎と、文学者堀辰雄を合わせた人物という。

色彩や絵柄の美しさは期待を裏切らない。これまでの宮崎アニメは、空を舞うシーンが多った。作品パンフレットで鈴木敏夫プロデューサーは「戦闘機が大好きで、戦争が大嫌い。宮崎駿は矛盾の人である」と原作者で脚本と監督を担当した宮崎さんを評している。監督の父は、航空機部品メーカーの役員を務めていたというから頷ける。本作は空を飛ぶという純粋な夢と現実の残酷さを描くことで戦争というテーマに挑戦した。美に傾き代償は少なくない。くだらないがおもしろい作品が蔓延する世の中に慣れきった現代人は、難解なアニメをどう観るのだろうか。

 

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