朝原雄三監督、公開前に
『釣りバカ日誌19/ようこそ!鈴木建設御一行様』が全国上映中だ。映画『釣りバカ日誌』は、連載29年目の人気漫画が原作(作・やまさき十三、画・北見けんいち)。釣りと家庭を愛するハマちゃん(西田敏行)と釣り仲間のスーさん(三國連太郎)とのゴールデン・コンビ主演の映画シリーズだ。ダメ・サラリーマンのハマちゃんと勤め先の鈴木建設会長であるスーさんが実は釣りの師弟関係にある、両極の魅力的なキャラクターが織り成す人情コメディである。
<物語>
多忙な毎日の鈴木建設会長、鈴木一之助(スーさん)。一方、仕事より釣りが命の浜崎伝助(ハマちゃん)。会社の健康診断にひっかかったハマちゃんは、胃カメラを飲む、飲まないで大騒ぎする。総務部の派遣社員・河井波子がハマちゃんのデスクへ来て説得するが、嫌がるハマちゃんを部下である高田大輔が説き伏せる。健康診断後、ハマちゃんら鈴木建設御一行は大分県へ社員旅行に出発する。幹事は同県出身の波子だった。ハマちゃんはさっそく波子の兄である地元漁師の康平と佐伯湾で釣りざんまい。そのとき、波子に思いを寄せる大輔は……。
西田敏行、浅田美代子、常盤貴子、竹内力、山本太郎、三國連太郎
監督:朝原雄三、脚本:山田洋次/関根俊夫
シリーズ6作目の朝原雄三監督は、1964年香川県生まれ。八月、竹川英紀アナウンサーが東京の松竹で朝原監督に聞いた。
――シリーズ6作目になりますね。
「14」のときに「これで最後だから」と頼まれたんですが。段々愛着が深まって『釣りバカ』の一員だと感じるようになりました。
――シリーズ初の社員旅行ですが。
毎回地方ロケを慣行していますが、今回はたまたま大分県からお誘いがありました。地方ロケに行くときのストーリー上の動機に苦労していますが、社員旅行という案を温めていて。これまで社員旅行に行くような県に巡り合わなかった。でも、大分といえば別府。昔は社員旅行のメッカでしたよね。
――今回の『釣りバカ日誌19』の特色は。
前回の「18」がスーさん中心のお話だったので、今回は久しぶりにハマちゃんの活躍編になっています。西田敏行さんのいわゆる芸達者な部分が発揮された、楽しめる作品に仕上がりました。
――西田さんは、アドリブの多い役者さんと聞きますが、実際は?
台本の一字一句を違わずにしゃべるっていうよりも、西田敏行というフィルターを通して出た言葉のほうが監督として聞いていても安定感があります。ハマちゃんを生きているっていうところが半分ありますからね。
――ハマちゃんは、異端児で企業の中では生きづらいところもありそうですね。
西田さんもよくおっしゃっていますけれど、「ハマちゃんを弾き飛ばすような社会は息苦しくてつまらない」と。その意味で、今回は弱者の視点、契約社員の問題も入れています。企業のセキュリティー強化も。まさに松竹の問題でもあるんですよ。今年カードセキュリティー制が松竹に導入されまして。また僕がカードを忘れるんですよ、これが(笑)。皆さんにも共有してもらえるような身近な問題ですよね。
――スクリーンを彩る常盤貴子さん演じる波子について教えてください。
最初に常盤さんは、波子役には少し抵抗があったみたいです。大人しくて従順で、最終的にはお金持ちの男の人と結婚する古臭い女性の役柄は、今の女性に受け入れてもらえないのではないかと。よくわかりますよね。でも、田舎から出てきた派遣社員の女性は沢山いる。強くて理想とされるようなキャリアウーマンばかりではない。弱者を切り捨てずに、その人たちの生活を描いてみたいなと。
――ハマちゃんが波子の実家に行って宴会する場面にジーンときました。
シナリオ・ハンティングに行くと、佐伯市ってリアス式海岸の田舎街。そこで一生懸命に歓迎してくれるんですよ。料理屋からスナックに流れるような展開ではないわけで。
リアルに映画のような家での宴会になる。だから地方が物語を決めるっていうか。ここ数年の『釣りバカ日誌』に関しては、シナリオ・ハンティングに行って「じゃあここだったら、どんなお話になるかな」とフィードバックして作っています。話に合わせて場所を探してくる作り方ではないんですね。
――三國さんはどんな役者ですか。
「尊敬する」といえば、ありきたりですが。「一生懸命やるとは、こういうことか」と思わせる俳優さんです。台本を信じられないほどの回数読んで、アプローチを考えてくる人。ご本人もおっしゃっているんですが、不器用な方なんです。自分で納得して、役が自分のなかに入って。それで初めてセリフが言えて、演技ができる。いくつになってキャリアがあっても小手先でやらないっていうのは大事なことなんだと反省させられる俳優さんですよ。
――結婚式のシーンについて教えてください。
今回の結婚式は、『祝辞』(1985年、監督:栗山富夫/脚本:山田洋次)のパロディになっているんですよ。原作が90分の映画を、本作の後半30分でどうやってやるかっていう意味でチャレンジングなシーンでした。
この番組で今夏イチオシ映画として公開前に紹介した『おくりびと』が大ヒット中の松竹。その松竹が配給する国民的人気シリーズ『釣りバカ日誌』は、来年20の記念回を迎える。豊かな感情を引き起こしてくれる娯楽作で、ハマちゃんのドタバタぶりには思わず声をたてるほど笑っちゃいます! ロケ地である大分県佐伯市出身の竹内力さんが常盤貴子さん演じる妹・波子を想う兄貴っぷりを好演。劇場であなたを獲物(豪華キャスト)が待ち受けている!? By Director H.
『釣りバカ日誌19/ようこそ!鈴木建設御一行様』、全国公開中。
映画情報番組『シネマストリート』は毎週日曜よる7時から放送。
一部をブログで紹介しています。
「映画では善福寺川が出てきます。東京・杉並のどこの橋かちょっと注目して観て欲しいですね」。先月の番組で『東南角部屋二階の女』(全国順次公開中)の脚本家・大石三知子さんをスタジオにお招きした。
住宅地の古いアパートを舞台に繰り広げられるドラマは、心に陽が差し込むような作品だった。聞き手の竹川英紀アナウンサーは、上京して初めて住んだ場所が落合。そして筆者は荻窪で育った。懐かしい杉並の風景漂う映画を紹介する。
<物語>人生を立て直すために会社を辞め、祖父・友次郎(高橋昌也)の土地を売却して亡き父の借金返済に充てようとする野上(西島秀俊)。嫌な仕事から逃れようと後輩の三崎(加瀬亮)も連鎖的に退社してしまう。フードコーディネーターの涼子(竹花梓)は、仕事も人生も不調。「結婚でもしよう」と見合いした相手は、野上だった。三崎と涼子は、売却予定の土地に建っている昭和の趣漂う古アパートに転がり込む。そして隣接する母屋に住む物言わぬ祖父。それを見守ってきたアパートの女性オーナー(香川京子)。オーナーが経営する小料理屋の常連で畳屋の亭主(塩見三省)……。日常を丹念に生きている人生の先輩たちと時間そして場所を共有するうち若者三人の感情がほぐされていく――。
監督は、1980年北海道生まれの池田千尋さん。脚本の大石さんともに、05年設立された東京藝術大学大学院の映像研究科の1期生だった。同大学院の監督コースは、北野武、黒沢清両監督が教授を務めている。日本映画美術界をリードする磯見俊裕さんは、本作のプロデューサー。「藝大で教えている磯見さんが池田さんに声をかけたことが映画化のきっかけでした」。一方の大石さんは、映画専攻脚本領域で学んだ。「OL生活を経て、大学院には社会人入学しました。この作品は脚本コースを終了する際に提出する卒業制作で書いたのです。もともと日当たりのよい部屋の話を書きたいと思っていました」。子ども時代に住んだ日本家屋。その東南角部屋の記憶から発展させた物語だという。昨年夏には映画化が決定された。最後に、映画の脚本家になる夢を実現できた理由を聞くと。「コンクールやコンペへ積極的に出品したり、諦めずに忍耐力で書き続けた結果だと思います」と終始丁寧な言葉づかいだった。因みに大石さんは、弊社のスポーツジャーナリスト講座の卒業生であります!
By Director H.
『東南角部屋二階の女』、ユーロスペースほか全国順次公開中
黒沢清監督『トウキョウソナタ』が公開中。家族のつながりを見つめる親と子の家族ドラマだ。本年度、カンヌ国際映画祭「ある視点」部門の審査員賞を受賞した。オーストラリア出身のマックス・マニックス氏の脚本を原案に、映画化された。
物語
トウキョウの線路沿いで暮らす佐々木家。会社で総務課長を務めていた父・佐々木竜平(香川照之)は、リストラで突然に解雇される。家族に言い出せず、毎朝出勤するように見せかけて職探しをする。小学六年生の次男・健二(井之脇海)は、給食費を月謝に流用し親に内緒で、かねこ先生(井川遥)のピアノ教室に通い始める。一方、大学生の長男・貴(小柳友)は夜中にバイトし朝帰りする生活をしていたが、米国軍に入隊すると言い出し、父の猛反対を振り切って発ってしまう。息子二人は母親だけには本心を語ってきたが、母親・恵(小泉今日子)は家に押し入った強盗(役所広司)に盗難車で連れ去られてしまう。
一緒に暮らしながらも、大事なことは秘密にし明るみに出て衝突するまで話し合わなかった佐々木家。お互いを気にはしていても、本当の自分自身は隠している佐々木家のバラバラの不協和音は、一つの旋律を奏でられるのか――。
十歳の少女ベティの家族ドラマ『ベティの小さな秘密』。
ゴダールのミューズで、小説家のアンヌ・ヴィアゼムスキーさんの実話を基に書かれた小説を、ジャン=ピエール・アメリス監督(『デルフィーヌの場合』)が映画化。脚本は、ギョーム・ローランさん(『アメリ』)。
~ベティがエリザベスに成長するストーリー~
十歳のベティは、赤いコートを着込み、髪を真ん中分けしてギュッと結んだ女の子。幽霊がいそうな暗がりが苦手だ。屋敷と塀を隔てて隣接する精神病院院長のパパと、最近外出が増えたママ、そしてお姉ちゃんと暮らしている。
姉アニエスは寄宿学校に入り、両親は不和で毎晩喧嘩をしている。孤独を抱えるベティだが、父の病院から逃げてきた患者を庭で見つける。納屋でその青年イヴォンをかくまうことに決め、内緒で食事や服を運んで毎日世話を焼き始める。
ママは新しい恋人をつくり、一層両親は大人の問題で娘にまで目が届かない。ベティは密かな計画を練る。
出演
ベティ/ アルバ=ガイア・クラゲード・ベルージ
パパ/ ステファヌ・フレイス(『ミュンヘン』)
ママ/ マリア・メデイルシュ(『パルプ・フィクション』)
イヴォン/ バンジャマン・ラモン(『美しき運命の傷痕』)
ジャン=ピエール・アメリス監督。1961年、リヨン生まれ。八月来日の折、都内ホテルで竹川アナウンサーが話を聞いた。
Q. 原作のどんな点を気に入りましたか。
A. 感動したのは、描かれている子供のビジョンでした。そしてストーリーも、インパクトが強かったです。十歳のベティという女の子が父が経営する精神病院から抜け出してきた若い患者をかくまって、最後には仲の良い友だちになる。どちらかというと、彼女が青年を守ってあげる存在になる。そんなストーリーに惹かれました。そして二つのメリットを感じました。つまり、私自身の子ども時代を描ける、また幼いころの感情も描ける。同時に、観て楽しい冒険映画のような、ファンタジーの詰まった映画を作れると。
Q. ベティのような感情を、監督も思い出した?
A. 主人公と同じような子どもゆえの恐怖、不安というものを私も抱いていましたね。大きい家っていうのは、子どもにとっては怖いものなんです。幽霊が階段を上ってくるんじゃないかとかね。
Q. ベティ役のアルバ=ガイアさんとは、演技について話をしましたか。
A. 撮影が始まる前に、大事なことを話し合いました。どうして私がこの映画を撮りたいか。彼女からは「自分自身はどんな女の子で、どんなことが怖いのか」を教えてもらいました。
Q. 本作は宮崎駿さんのアニメーションに影響を受けているそうですね。
A. 宮崎監督は天才ですから、作品から謙虚な気持ちでインスピレーションを受けました。特に『千と千尋の神隠し』は何度も観ていて、この映画の構成が本作に大きな影響を与えています。千尋も両親がブタになっちゃって一人になりますよね。今回、ベティは両親から置き去りにされた状況にあります。でも、孤独を乗り越えて成長していくんですね。
Q. 宮崎アニメの好きなところは?
A. 『千と千尋の神隠し』は、本作をずっと伴奏してくれたようなところがあります。「怖がることを恐れてはいけない」。宮崎監督の作品は、そんなことを語っているようで素晴らしいと思うんですよ。恐怖を乗り越えれば、その先に喜びであったり、開放であったり、とてもポジティブなものが待っていることを作品が語っているように思いますね。
Q. フランスの幾つかの小学校で本作が上映されたそうですね。
A. 沢山の子どもたちが、とりわけ女の子が、ベティと自分を重ね合わせて観たことがわかりました。1960年代を舞台にしていますが、物語に入り込んで、それに気づかない子どもが多かったです。「ベティと同じように怖いものがあるんだけれど、それをなかなか他人に言えなかった」とか、「生きていくのを手助けされました」という風な内容の手紙を沢山もらって感動しました。
Q. 監督が考えるこの映画の見どころは?
A. まずシンプルに、ファンタジーとサスペンスそして感動がいっぱい詰まった物語の展開を追っていく喜びを感じて欲しいというのがあります。また、大人たちには、作品を通して子どものころの自分の初々しい感情というものを思い出してもらいたいです。この映画でフランスの母親たちからこんな反響がありました。「自分の娘が、ひょっとしたらベティのような不安を抱えているんじゃないかと思いました。娘とちゃんと話してみます」と。
とても背が高いのに威圧感を感じさせないアメリス監督。ベティと父親がボードゲームをするシーンなどに60年代のフランスの家庭が垣間見られる作品だ。ベティの目線で語られるストーリーには、派手な事件は起こらずとも、繊細な感情が呼び起こされ、心が和んだ。
『ベティの小さな秘密』
シネセゾン渋谷ほか全国順次公開中。
By Director H.








