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退職する鉄道運手士が思いがけない事態に巻き込まれていく姿をユーモアを交えて描く『ホルテンさんのはじめての冒険』がノルウェーから到着した。20周年をむかえた東京・渋谷のBunkamuraル・シネマで公開されている。
『キッチン・ストーリー』(03)やチャールズ・ブコウスキーの原作を映画化した『酔いどれ詩人になるまえに』(05)で知られるベント・ハーメル監督の心温まるドラマだ。昨年11月、来日時ハーメル監督に都内でインタビューした。
主人公は、週末に最後の乗務を勤めて引退する予定のベテラン鉄道運転士、オッド・ホルテン。オスロ(ノルウェーの首都)で一人暮らしをしている。時刻表のように規則正しい生活を大事にする几帳面な男である。ところが、退職前夜に行われた送別会の二次会を付き合い損ねた結果、翌朝に寝坊する。そこから、レールの敷かれていない第二の人生へ再出発する――。
ホルテンさん役は、ノルウェー生まれの俳優、ボード・オーヴェさん。本作は昨年のアカデミー賞外国語映画賞ノルウェー代表作品だ。ノルウェー鉄道の看板列車「ベルゲン急行」や北欧家具も映画のアクセントになっている。
――二度目の来日ですが、日本の印象を教えてください。
日本の好きなところは、礼儀正しく、秩序が整っていることです。今回、妻と来日しましたが、「(性格的に)あなた向きの国よ!」と言われました。
――定年する男の話です。ノルウェーの定年は何歳ですか。
定年は67歳です。もっと早く退職したいと願う人が増えていて、62歳や65歳で引退するシステムもできつつあります。人口500万人弱の国ですが、年金制度は充実しています。ただし、人口増加や高齢者の寿命が延びていますから、課題もあります。
――映画のテーマは?
ホルテンさんが退職して冒険する物語の中に、何か新しい人生の方向を見つけるということと同時に、運転士が退職する話にとどまらない普遍的なメッセージがあります。それは、ホルテンさんと同世代の人以外にも感じ取ってもらえるものだと思います。
ベント・ハーメル監督
――鉄道とロケ地について教えてください。
実際の鉄道が登場します。ホルテンさんが運転するのは、オスローとベルゲン(世界遺産の港町)間の路線という設定で、東から西へ雪原を通ります。乗客が乗った鉄道でロケをする大変さもありました。また、オスロー郊外の空港も撮影場所として使用しています。
――「亡き母とすべての女性スキージャンパーに捧ぐ」というエンドロールの意味を教えてください。
まず、私の母が以前、スキー・ジャンパーでした。劇中でも、主人公の母が以前スキー・ジャンプの競技者だった設定です。その役の若い女性は、実在の世界チャンピオンです。「女性だってスキー・ジャンプをしていいはずだ」というようなセリフは、女性でもラージ・ヒルのようなスキー・フライをできるようにする運動を母たちがしていたからです。
――本作について日本の映画ファンに伝えたいことは。
若い方は、青春やアクション・ジャンルの映画以外は観ないかもしれません。でも、このような映画を観た若者には「観てよかった」と気に入ってもらえることが多いのです。まずは、劇場に行って観ていただきたいですね。
家族に関わるお話になると監督の表情が穏やかになるのが印象的だった。映画は、「何事にも遅すぎることは決してない」と感じられる希望のあるストーリーになっている。『シルバー機関車賞』の表彰式で、ホルテンさんが同僚に祝われるシーンや、「目隠しドライブ」を特技とする老人との会話が、味わい深い。 By Director H.
『ホルテンさんのはじめての冒険』、Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開中。
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